助産師「枡谷香奈」さんをインタビュー!
2022年2月4日




枡谷 香奈
産婦人科クリニック勤務。「自分を大切にできる人を増やしたい」という思いで
性の健康教育に関する内容を主に、SNSで発信。その他助産師ならではの
内容を盛り込んだワークショップやお話し会などを主催し活動している。
記事のポイント
- 助産師としての働き方
- 性の健康教育について
- 自分を大切に思うこと




目次
看護師になろうと思った理由






「人の役に立ちたい」という気持ちが根底にあります。
小さいころから「人の役に立ちたいと思える仕事がしたい」そう考えていました。元々クリスチャンの学校に在学していて、聖路加の看護学校と接点があった上、人の「終末」についての学びもあって「そのご家族が温かい気持ちになるようなケアができたらいいな」と考え看護師の道に進もうと決めました。
看護学校に入学し、実習で一番印象に残ったのが、産婦人科での実習でした。運良く出産に立ち会える機会があって、この時に助産師になるきっかけがありました。それは、赤ちゃんが生まれた瞬間、女性が「母親」に姿が変わる場面に立ち会えたことでした。妊娠中の女性は、10ヶ月間の妊娠期間を経て身体の変化や母親学級などで、「母親」となっていきます。でも出産した瞬間、その女性は本当の意味で「母親」になったんだなって、看護学生ながらに肌で感じました。
終末期看護への興味もありましたが、出産という家族の大切な瞬間に立ち会うことができて、助産師になることの「よさ」を体験しました。助産師=お産をとる人という印象が強いけど、自分は周産期の前後にも積極的に関わりたい。女性の一生を支えていたいという気持ちが芽生えました。家族を構築していくタイミングから寄り添うことも、家族の幸せに繋がっていくのではないかと感じ、助産師の道に進むことにしました。
これまでのご経歴






産婦人科を経験して、その後は海外へ留学しました。
助産師免許取得後、総合周産期センターにて5年間務める中でNICU、妊婦病棟、MFICU、LDRを経験しました。MFICUでの勤務が一番長かったのですが、様々な命の形を思い知らされる環境でした。大変だった分、それだけやりがいと学ぶことが多く、良い経験になったと思っています。
性の健康教育に関心を持ち始めたのは、助産師の勉強をしていた大学院の頃からです。しかし、大きな病院ではなかなか地域の活動に行くチャンスや病院で個人的に活動するということは難しく、中にはなんで性教育なの?というような師長さんもいました。臨床でがむしゃらに働いていた5年目は、自分の思いがなかなか形にならないことや無力感、腰痛、月経不順など色々な物事が積み重なって辛い時期でした。その中で、地域で活動されていた助産師さんに「助産師だって自分を大切にしていい」と言われたひとことが私にとってはターニングポイントになって、そこから自分の思いを大切に、そして自分の身体も大切な働き方を目指そうって思いました。




自分の視野を広げるため、元々興味のあった海外へ行こうと決めました。病院を退職し、学生ビザにてオーストラリアのシドニーへ1年間語学留学しました。助産師として知りたかった助産のことや性教育のことについては、身近な人や実際に現地で助産師として働いている人にコンタクトを取ってお話を聞きました。留学経験のおかげで、自分から学びにいく姿勢がよりついたように思えます。自主的に動かないと、学びにならないのが海外のいい所で、まずやってみる精神がつきました。
そして、実際に日本と海外での性教育の違いを肌で感じることができました。この学んだことを活かしたい。そう思い帰国し、取り組み始めたことがあります。
現在の活動について






「性の健康教育」と「女性が自分を大切できるような生き方」について発信しています。
帰国後から現在は、産婦人科のクリニックで働いています。それと同時に、個人の活動としてSNSを中心に「性の健康教育」や「女性が自分を大切にできるような生き方」について発信しています。そこでは、大人のための性教育や、女性ホルモン・月経についての講座、妊活・お悩み相談などなど、様々なことを発信すると共に、メッセージやご依頼を頂いた方々へ個別に対応したりなどしています。
性教育は自分を大切にする知識を持つ教育だと、私は思っています。それを助産師の視点でお話しすることができるこの環境を大切にしたいです。




皆さんは性教育について、どんな印象を持っているでしょう?
男性も女性も、少しデリケートな悩みと感じている人も多いのではないしょうか?
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)では、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」という性教育のガイドラインの一つがあります。
「包括的セクシュアリティ教育」を実践することによって、さまざまなジェンダー、セクシュアリティを生きるすべての子どもたちが、安心で安全な環境の中で、他者と対等で平等な関係を築き、自分の人生において性(セクシュアリティ)を豊かに楽しむことができるようになります。
国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】──科学的根拠に基づいたアプローチ
生活背景や文化・宗教などといった背景があり、日本には日本の教育体制や考え方があるのは、悪いことではありません。ですが「包括的セクシュアリティ教育」を学べる環境が日本にももっとあるといいなぁと私は思います。私も助産師になるまで日本の教育を受けてきましたが、海外や上記の考え方・学習法に触れたことでより学びと実践に繋げることができたと感じています。
実際に私の活動に参加して下さった方々からは「性教育って、もっと一般的で、もっと大人として学ぶこともあるんだ」とお声をかけて頂くことも多いです。他にも、男性のユーザーからは「生理中の彼女にどう接していいかわからなかったけど、お話を聞いて考え方と接し方が変わりました。」と思ってくれる人もいました。これらの感想を頂けるのは、学校では習わなかった性の捉え方を、皆さんが実感できるからだと思っています。








今後の展望






お話しさせて頂いた内容を、今後も活動を通して広めていきたいです。
助産師は全国4万人弱しかいない職業で、一般には「お産の時に会う人」というイメージがあるのかなって、色々な人からお話を伺っている中で感じています。でも、助産師は女性の一生に関われる職業であるにもかかわらず、分娩介助のイメージだけが強くあることは、凄くもったいないことです。そして、働いている助産師さんたちが、その女性のために身を粉にして働く・生きていく環境があることも、寂しく思います。
病院で来た人にケアすることだけでなく、病院の外に出ていろんな分野の方の力を借りながら、みんなで女性をサポートする、その一員として助産師の力を発揮出来たらいいと思っています。「助産師だからできることって、もっとたくさんあるじゃないか!」「人のためにも必要だけど、自分のためにも考えなくちゃ」経験は必要かもしれないけど、そんな想いを持って生きていく助産師さんたちがもっと増えると、もっと楽しくてやりがいのある仕事になっていくと思います。その一員に私もなるために、「助産師」としてどんどん今の活動を通してそれを広げていきたいです。
読者へのメッセージ






小さい一歩でもいいから踏み出してみて!
自分が深めていきたい知識は病院で学ぶには限度があると感じ、病院の外にいる助産師さんに会いに行ったり、勉強会に積極的に参加したりすることで視野を広げました。特に海外留学は、他職種の人に出会い、起業したり発信をしたりしている方々に出会うきっかけとなりました。 私は決して特別な人間ではないし、優秀な人間でもないです。でもそんな人でも少しのきっかけで思いもよらないことが起きたりします。オンラインで気軽に出会える時代になったからこそ、皆さんにはたくさんの人に出会って感じて、自分らしさを発揮できる活躍の仕方を見つけてほしいです。
仕事がないと生活上困る、それは当たり前です。新しいことにチャレンジすることって、難しいかもしれない。でもその一歩進んだ先は、意外と面白くて、軽いステップで事が進むかもしれない。もし希望や目標があるなら、小さい一歩でもいいから踏み出してみてほしいです。もしその一歩の踏み出し方がわからないときは、私でもいいし、身の回りにいる先輩でもいいから、まずは輪に加わってみて。必ずあなたを受け入れてくれる場所があります!。私の経験が、何かを変えたいあなたのお役に立てれば嬉しいです。
枡谷香奈さんのことをさらに知りたい方はこちら!



